送客の主導権を握り、グローバルレベルのプラットフォーマーへ。徹底したツーリスト目線を武器に「インバウンドど真ん中」に挑む。

訪日客数の増加に伴い、急成長しているインバウンド市場。東京五輪が開催される2020年には訪日客数が4000万人を突破するとも言われ、まだまだ伸び続けることが予想されています。そんなインバウンド業界で様々な仕掛けを行う先達たちと、株式会社LIFE PEPPER取締役 高橋佑輔が対談する「インバウンド仕掛け人100」。
今回は、インバウンドツーリズム業界の牽引者的存在である WAmazing 代表取締役・CEOの加藤史子さんとの対談をお届けします。

提供するのは、旅の伴走型サービス

ー加藤さんが現在取り組まれていることについて教えてください。

加藤:WAmazingは「手の中の旅行エージェント」として、旅行中のアクティビティや宿泊場所の予約等ができるアプリとウェブサイトを運営しています。また、訪日外国人観光客向けに無料SIMカードの配布も行っています。出国前にアプリをインストールし事前登録しておくと、日本国内の空港にある自動受け取り端末で無料のSIMカードが受け取れるという仕組みです。

弊社の特徴は、旅前から旅中を通じての伴走型サービスであるところ。旅前にはウェブサイトでアクティビティ等を予約することができ、旅中はインストールされたアプリで無料SIMカードを管理したり、観光情報を見ることができるサービスなどを展開しています。

ーユーザーの属性を教えていただけますか?

加藤:弊社の場合は圧倒的に観光ニーズが高いですね。LCCを活用しながら賢く安く旅行したい友達グループや、家族連れといった方々が主要なターゲットとなっています。男女比はほぼ半々。20代〜40代が中心で、一番多いのが20代、次が30代です。これまではアプリの対応言語が中国簡体字と台湾・香港繁体字だったこともあり、7割が台湾、3割が香港のユーザーでした。最近英語対応をして、中華圏だけでなくASEAN6カ国に新規に展開しています。

高橋:私の台湾の親族や知人も、WAmazing を利用している人が多いです。まずはSIMから入り、ホテルの情報を見たりとか、使ってみると便利という声が上がります。

ツーリズムビジネスの経験をもとに、インバウンド市場のど真ん中に挑戦

ー事業立ち上げの背景

高橋:私が加藤さんに興味を持ったきっかけは、加藤さん = ツーリストビジネスのプロであるという点と、そんな加藤さんが「ド直球」なサービスを立ち上げられた点です。まずは現在の事業を立ち上げた背景を教えていただけますか?

加藤:前職のリクルートで「じゃらんnet」の立ち上げに携わったのが、観光産業との最初の関わりでした。その後は、同社で観光振興による地域創生を目指す事業に取り組んでいました。

その頃からインバウンド市場が広がっていくだろうことは予想していたのですが、そこに食い込めるプレーヤーがいないことに課題感を持っていました。大手企業は国内旅行の市場が20兆円と大きいため、インバウンドを本気でやる感じではなく、ベンチャー企業は参入障壁の低いニッチな部分にしか入り込めていない。誰かやらないかと待っていても、インバウンドのど真ん中をやる会社が出てきませんでした。

私が考えるど真ん中とは、送客力を持つことです。10年以上前に、地域の人が主体となって地域資源の棚卸しや商品づくりをし、地域発で観光産業を樹立しようという「着地型観光」という言葉が話題になりました。私は本来、観光とはそうあるべきだと思うんです。消費が行われる場所の人たちが、きちんと集客の主導権を握る必要があると考えていました。

インバウンドにおいて、日本は着地地点。消費が行われる場所です。だから主導権を握るべきなのですが、実際には海外の旅行会社や予約サイトが送客力を持って人を送り込んでいる状況がありました。この先の未来では、受け地である日本が海外の旅行予約サイトに高いお金を払い送客を依頼することになる。そういう未来を少しでも回避するために、送客というポールポジションを握らないといけないのではないか。その課題感からWAmazingの立ち上げを決めました。

ー起業後は、どのように事業を組み立てていったのでしょうか。

加藤:海外の大手旅行エージェントではなく、日本の観光業者が送客の主導権を握るためにどうすればよいかを考えました。真正面から海外の大手企業と戦うのはベンチャー的ではありません。そこで、「モバイル特価型で通信料無料」という仕組みをインセンティブにしつつマーケティングしていくなど、いくつかの戦略を組み合わせながら事業を組み立てていきました。

高橋:本当に素晴らしい挑戦だと思います。日本に旅行予定のユーザーは、WAmazingを使って旅行手配する、という習慣がない。これは、新しい概念なので当たり前ですね。まさに加藤さんは、新しい旅行手配の概念を作られている。苦労されるとは思いますが、これからの進展が楽しみです。応援してます。

ーこれまでのご経験が今のビジネスに繋がっていると感じる点はありますか?

加藤:前職で観光事業者と日本人観光客をマッチングさせる国内のB to Cモデルに携わっていた経験から、事業者側のニーズや困り事の把握はできていました。私だけではなく創業メンバーに同じような経歴の者が多かったことは、WAmazingの一つの強みですね。

また、旅行離れしていると言われる若者を、地域の観光に繋げていく仕組み作りに携わっていたことも役立っていますね。マッチングビジネスモデル業者の価値は、出会うことが難しい2者の出会いを仲立ちすること。WAmazingでは、近年増加しつつある個人旅行者、いわゆるフリーインディビジュアルトラベラー(FIT)と、地方の魅力的な事業者との橋渡し役を目指しています。

大事なのは、ツーリスト目線で考えること

ー観光事業者側は、インバウンドツーリズムに対してどういう課題を持っているのでしょうか?

加藤:まず、観光客が団体や旅行会社が作っているパッケージツアーの参加者から FIT に移行した時、どう集客したらいいのかわからないという課題がありますね。FIT は時間に縛られず、自分の好みに合わせて動くので、行動を予測しづらく、アプローチしにくいんです。

それから、アクセスの問題は大きいです。日本の国内旅行市場は車で行くことが前提で、実際に国内旅行者の9割が自家用車ユーザー。レジャーブームが起きた80年台後半から90年台中盤にマイカーが普及したことで、レジャーのインフラも車ありきで発展したという背景があります。旅行会社のツアー等も基本的に施設までの送迎付きですよね。ですがこの仕組みは、公共交通機関を利用する外国人個人旅行者にはフィットしません。それを象徴しているのが、例えば「アクセスページ」の記載文言があります。多くの施設等では「〇〇 IC(インターチェンジ)から〇分」などと書かれていますよね。外国人個人旅行者は、「〇〇 IC(インターチェンジ)」がそもそもわかりません。ならば、外国人向けの情報発進時は「成田空港から◯分」など、交通のハブになる場所を書いた方がいいかもしれない。このように、旅行者のセグメントにより、どう伝え方が変わるのか、ツーリスト目線で考える必要があります。

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