
日本の外国人雇用の現状とその課題とは?
働き手の不足は日本で深刻な問題になりつつありますが、その解決策の1つとして注目されているのが、外国人労働者の受け入れ拡大です。外国人の雇用が大々的に行われるのはこれまでも例がなく、多くの企業で実験的な取り組みが行われ始めています。
今回は現在の外国人雇用の現状についてや、抱えている課題についての整理を行なっていきます。
Contents
外国人の雇用が進む日本
外国人観光客が増えているだけでなく、日本では外国人の労働者も増加傾向にあります。
外国人労働者の受け入れは拡大傾向に
都心部を中心に、コンビニやファーストフードの店舗で外国人労働者の姿を見かけることも増えたように感じている人も多いのではないでしょうか。事実、日本の在留外国人の数は2018年時点で273万1093人と、過去最高の数を記録しており、前年と比較しても16万人も増加しています。
参考:Wedge Infinity「外国人労働者の受け入れ拡大、体制は万全か?」
受け入れ分野については飲食業などのサービス業、建設業など、人出不足が顕著になっている分野を中心に拡大が進み、現在は介護や造船など、即戦力が求められる多くの業種での活躍も期待されています。
積極的な受け入れを政府も企業も進める
日本は昔から外国人受け入れに関する制度が厳しく、相当な基準をクリアしていなければ正式に日本に居住したり就労したりすることは難しいものでしたが、外国人労働者の受け入れに関しては非常に軟化しています。
出入国管理法の改正によって、「特定技能1号」と「同2号」が在留資格として新たに設定され、技能実習生として国内での労働が許可されただけでなく、習熟した技能を有することができればより長い滞在や家族の同伴が可能などの待遇の改善も期待することができるようになりました。
加えて外国人の就労だけでなく、生活のサポートを提供する支援機関も登場しており、単なる受け入れにとどまらない環境の整備が進んでいます。
外国人向けの医療サポートや社会保険の加入、そして悪質な仲介業者の排除なども少しづつ行われているため、在留資格とともに日本での安全な生活も提供されるようになってきています。
外国人の雇用拡大が進む理由
外国人の雇用拡大が進んでいるのにはいくつかの理由が挙げられます。
日本の労働人口の減少
1つは日本の労働人口の減少です。少子化の影響により、日本全体の人口は減少傾向に入っているだけでなく、高齢者の比率も増えつつあります。
統計によると、2017年時点は6,500万人を超える数があった生産年齢人口も、現在の少子高齢化が進めば2040年には5,200万人、およそ20%の人口減少が想定されており、日本の産業に大きな打撃を与えると考えられています。
参考:WORLD ECONOMIC FORUM「日本の労働人口、2040年には20%減少の見通し」
根本的な解決策としては少子化対策が叫ばれていますが、出生率の上昇は効果が出るまで時間がかかる上に、実際にどれほどの結果を残すかもその時になって見なければわかりません。
外国人労働者の受け入れは、海外から働き口を探している若者をはじめとする労働者を引っ張ってくるだけで直近の労働力不足を解消できるという即効性を秘めているため、政府をはじめ、多くの企業でも検討や導入が進んでいるのです。
優秀な人材の獲得
また、単なる労働力だけでなく、日本ではなかなか見つけることのできない優秀な人材を発掘するという意図も大いにあるでしょう。
日本ではエンジニアリングなど、特別なスキルを持った労働者の数も不足が深刻化しており、頭数だけではどうしようもない人手不足も表面化しつつあります。
一方で海外ではエンジニアリングの教育に力を入れている国も多く、インドなどはファイナンスやプログラミング・サイエンス関連の優秀な人材を排出する国となりつつあります。
企業が積極的に外国人の受け入れを進めているのは、日本では見つかりづらい人材をリクルートすることも目的の1つです。
インバウンド需要の拡充
あるいは、増加するインバウンド需要に応えるために外国人労働者を必要としているというケースも考えられます。
今や日本は年間3000万人の外国人観光客を迎える観光大国となっていますが、必ずしも日本全国で十分な外国人向けの観光サービスが提供できているとは限りません。
特に人口減少が進む過疎地域では観光サービスの拡充は難しく、多言語案内やツアーコンダクターも不足する傾向にあります。そういった不足を補う上でも外国人労働者の活躍が期待でき、日本語だけでなく母国語で観光客の案内ができれば、地域にとっては心強い存在となってくれるはずです。
外国人雇用に向けた日本が抱える課題
日本での外国人雇用が進む中、まだまだ不足分を補うには不十分な点を抱えている様子も見受けられます。
複雑な手続き
1つ目は日本の在留に関する手続きです。一昔前よりも外国人雇用の門戸は開かれたとはいえ、まだまだ制度上の制約は厳しいところも多く、日本人でも混乱するような量の書類に記入をしたり、審査を行ったりする必要があるため、時間と手間を要するものであることには違いありません。
国によっては受け入れ用のチャンネルが十分に開かれていなかったり、そもそも受け入れを拡大していることについての案内すらも行われていないことはしばしばあるため、政府側での手続きの簡便化とチャンネルの拡大を期待したいところです。
長期雇用が難しい
また、現在の在留制度では5年ほどの滞在を終えた後は母国へと半ば強制送還のような形で帰国を強いられることもあり、10年を超える在留、あるいは永住のためにはさらに厳しい審査を通過しなければいけません。
そのため外国人にとってはハードルが高いだけでなく、それを乗り越えただけのリターンも小さいと受け止められてしまうことも少なくないため、効果的な人材確保に悪影響を与えているとみられる点もあります。
日本国内の企業としても、短期間で帰国してしまうことが確定しているようでは専門的な技能を教えたくとも教えられず、替えのききやすい単純作業のみを担当させることで労働者を消費してしまうことにもなりかねないため、根本的な人材不足の解決にも繋がらないのです。
優秀な人材に十分な給与を支払えない
また、たとえ優秀な人材が日本に興味を持ってくれたとしても、海外の勢いのある企業ほど給与を支払えないということであれば、日本に足を運んでくれないということもしばしばあるものです。
プログラマーをはじめとする人材不足も、中国や欧米圏の方が待遇が良いということで、日本の優秀な人材が海外企業に雇用されることが増えてきていることが一因でもあります。
給与はそれなりな上、日本在留のためには複雑な手続きが必要ということでは、思っていたような人材の確保も進みにくいものです。
おわりに
外国人労働者の増加は日本で活躍する若者が増えるということで、良い影響をもたらしてくれることが期待できます。しかしその一方で雇用に関する手続きが複雑だったり、長期滞在や永住の条件が厳しいということから、敬遠されてしまう要素を孕んでいる点も確かです。
外国人雇用を考えている場合、彼らを民間レベルでサポートできることがないかを検討することから始めるのが良いでしょう。
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